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伊藤 集通; 常山 鉄平; 乙坂 重嘉
no journal, ,
本研究では、地球環境への供給開始時期及び供給量が比較的明らかになっている人工放射性核種(Sr, Cs, Pu)に着目し、日本海における存在量とその時間変化を見積もることを試みた。使用したデータは、気象研究所のHAMデータベース,原子力機構のJASPERデータベース及びIAEA-MELのMARISから抽出した。解析の結果、(1)日本海では、大気からの降下量と同等かそれ以上の人工放射性核種が約30年間で蓄積されている,(2)特に、粒子状物質によって海水中から除去されやすいPuはその傾向が強い,(3)太平洋亜熱帯域からの比較的高濃度な人工放射性核種を含む海水の流入や、粒子による表層から深層への除去などにより、日本海深層に各核種が蓄積される、といったことが示唆された。また、本研究の成果は他の化学種についても適応できるもので、日本海における物質循環解明の一助になるものと考える。
荒巻 能史*; 外川 織彦; 乙坂 重嘉; 鈴木 崇史; 千手 智晴*; 皆川 昌幸*
no journal, ,
原子力機構では、1990年代後半より日本海全域における人工放射性核種濃度の現状把握、及び日本海深層の物質循環について観測研究を実施してきた。本報告では、これらの観測によって得られた海水流動のトレーサとして有効な放射性炭素(C)の広範な分布をもとに、深層水の特性やその循環について議論した。19992002年及び2005年に実施した調査で得られた海水試料中のCを、むつ事業所の加速器質量分析装置で測定した。その結果、各海域のCは表層の+70‰程度から深度とともに指数関数的に減少する傾向にあるが、日本海盆及び大和海盆の水深2000m以深では-50-70‰でほぼ一定の値となった。また、大和海盆と日本海盆西部の底層水におけるCにばらつきが顕著であるのに対して、日本海盆東部では水深2500m以深において、誤差範囲内で一定の値を示した。以上のように、日本海の各海域における底層水の特性を明らかにすることができた。
田中 孝幸; 乙坂 重嘉; 天野 光; 外川 織彦; 千手 智晴*; 磯田 豊*; 久万 健志*
no journal, ,
海水中溶存有機物(DOC)の挙動解明は海洋の炭素循環や地球温暖化の影響を紐解くうえで重要な因子である。DOC動態の時間スケールや供給源情報を与えうる放射性炭素同位体比(C)の測定は測定の困難さによりデータが非常に少ない。本研究では溶存態有機物中放射性炭素測定システムを確立し、日本海での鉛直分布を得ることとした。日本海大和海盆での鉛直分布を得ることができ、これは日本近海の西部北太平洋域では世界で初めてである。DOCのC鉛直分布は、表面で高く(-226‰)、深さとともに減少し、1,000m以深では-337‰で一定となった。DOCのCは、表面,深層ともに、ほぼ同海域における無機炭酸のC値に比べ約300‰程度低かった。このことより、DOCのCは海水の循環(海水年齢)に関係することが明らかとなった。